大判例

20世紀の現憲法下の裁判例を掲載しています。

東京高等裁判所 昭和50年(行ケ)125号 判決

事実及び理由

請求原因一、二、三項の事実については当事者間に争いがない。そこで審決取消事由について判断する。

成立に争いのない甲第二号証の一・二によれば、本願考案の昭和四七年一月一七日付手続補正後の明細書の実用新案登録請求の範囲の記載として、「クラツチ本体5内に前進用駆動摩擦板9、後進用駆動摩擦板10およびこれら両駆動摩擦板9・10の中間に位置する軸心方向に移動可能な油圧作動筒6をそれぞれ軸心を一致させて設け」、「クラツチ本体に設けた隔壁7により作動筒6内を前進用および後進用の油室イ・ロに画成し、前進軸2に遊嵌した前記作動筒6のブツシユ16に圧油の通路を設け、前記両油室イ・ロの何れか一方に圧油を供給して作動筒6を移動させ」とあるから、本願考案においては、原告主張のように、前進用駆動摩擦板・後進用駆動摩擦板および油圧作動筒は一体となつて、クラツチ本体外周内面と隔壁の内摺面と、軸との三点で摺動支持されている構成を備えていること、そして、このような具体的構成により、本願考案におけるクラツチは、ブツシユ支持機構・圧油経路機構・軸固定機構とあいまつて、従来の舶用クラツチに比べて、油圧作動筒が常時軸に垂直の状態を保つて滑動できるところから、こじれ現象を生ぜず、圧油が駆動摩擦板の面に作用した場合、駆動摩擦板全体が均一に被駆動摩擦板に圧接し、その結果、クラツチ本体から伝達される回転トルクの伝達が大となり、また、被駆動摩擦板のつれ回りも起らないので、クラツチ機構をコンパクトに構成できた上で、しかもクラツチ機構を向上させるという、格別の作用効果を奏するものと認められる。

ところで、成立に争いのない甲第四・五号証によれば、被告主張のように外周において滑動する油圧作動筒が第一引用例に、内周において滑動する油圧作動筒が第二引用例にそれぞれ示されてはいるが、前記原告主張のような、クラツチ本体外周内面と、隔壁の内摺面と、軸との三点で駆動摩擦板と一体の油圧作動筒を摺動支持するというクラツチ機構としての具体的構成については、全証拠を検討するも、各引用例、周知技術のいずれにも示唆するようなものは見当らない。

そうすると、審決は各引用例、周知技術には示唆されていない本願考案の具体的構成およびその作用効果の顕著さを看過して前記補正を却下し、ひいては要旨認定を誤つた違法なものいうべく、取消をまぬがれない。

よつて、原告の本訴請求は理由があるから認容する。

〔編註〕補正後の本願考案の要旨は左のとおりである。

クラツチ本体5内に前進用駆動摩擦板9、後進用駆動摩擦板10およびこれら両駆動摩擦板9、10の中間に位置する軸心方向に移動可能な油圧作動筒6をそれぞれ軸心を一致させて設け、これら両駆動摩擦板9、10と少許の間隙を置いて対向させて設けた各一枚の前進用被駆動摩擦板11および後進用被駆動板12をそれぞれ前進軸2、後進軸3に固定するとともに、クラツチ本体に設けた隔壁7により作動筒6内を前進用および後進用の油室イ、ロに画成し、前進軸2に遊嵌した前記作動筒6のブツシユ16に圧油の通路を設け、前記両油室イ、ロの何れか一方に圧油を供給して作動筒6を移動させ、以て前記両駆動摩擦板9、10の一方をこれに対向させて設けた前進用あるいは後進用の被駆動摩擦板11、12に圧接させてクラツチ作動させるように構成してなる舶用機関における逆転装置のクラツチ部

自由と民主主義を守るため、ウクライナ軍に支援を!